キタサンショウウオ(両生類)
  日本には、2科4属45種のサンショウウオが生息しています。その中でも特に有名なのは、体の大きさが1m以上にもなる大型のサンショウウオである「オオ サンショウウオ」だと思います。しかし、日本に分布する45種のサンショウウオのうち21種は20cm以下の小型のサンショウウオです。北海道にはエゾサ ンショウウオとキタサンショウウオの2種類の小型のサンショウウオが分布しています。エゾサンショウウオは日本固有種で北海道全域( 島嶼とうしょ を除く)に広く分 布しています。キタサンショウウオは世界で最も分布域の広いサンショウウオですが、国内では釧路湿原および上士幌町、国後島など限られた地域でのみ分布が確認されています。
 キタサンショウウオは、現在、宅地化や農地化、道路建設、太陽光発電所の建設等の開発などの影響によって、生息数や生息環境が減少し、絶滅が危ぶまれています。そのような背景から、釧路市及び標茶町では天然記念物として種指定されているなど、保全対策が進められています。
 キタサンショウウオはどのような生活を送っているのでしょうか?キタサンショウウオは、雪解けの頃、湿原の水たまりなどの水域で繁殖活動を行い、枯草な どに一対の卵のうを産みつけます。卵のうとは、たくさんの卵が詰まった寒天質の透明な袋のことです。キタサンショウウオの卵のうは太陽光などの光を受け青 白く蛍光発色することが知られており、その輝きは「湿原のサファイヤ」と呼ばれるほどです。キタサンショウウオは、繁殖期以外は基本的には水には入らず、 陸上で採餌をしたり、天敵から身を隠したりしています。そして、寒さの厳しい冬期はヤチボウズの中などの比較的乾燥した場所に入り越冬すると考えられてい ます。
 キタサンショウウオは一体どんなものを食べているのでしょうか?卵から 孵化ふかした幼生が主に食べる生き物としては水中のプランクトンが挙げられます。幼生 は上陸するまでの間、体の成長に合わせたサイズの ミジンコ類や水生昆虫といった水生生物を食べます。変態し上陸してからは、主にトビムシ、ハエ、クモ、貝類等の 土壌どじょう動物を食べます。また、当然ですがキタサンショウウオにも天敵が存在します。卵嚢らんのうや幼生の段階では、トビケラの幼虫、トンボのヤゴ、ゲンゴロウの 仲間などといった水生昆虫やエゾホトケやトゲウオの仲間などの魚類に捕食されてしまうことがあります。変態し上陸してからは、アオサギやタンチョウなどの 鳥類やキツネなどの肉食動物に捕食されるほか、近年では、アライグマやアメリカミンク等の外来生物による食害も懸念されています。
(解説:NPO法人 環境把握推進ネットワーク−PEG 代表 照井滋晴さん )